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共同研究事業 次世代静脈インフラの構築に向けた包括的な研究

概要
共同研究事業は、財団において廃棄物・3Rに関して設定をしたテーマを、当財団の会員の皆様並びに大学や研究機関に呼び掛け、興味のある方に参画していただき、環境面、技術面、経済面、社会面の観点から総合的に診断し、適用可能性、導入促進方策などについて共同で研究を行う事業です。そして、事業成果を広く公表することにより、環境負荷の少ない持続可能な循環型社会形成の推進及び地球環境の保全に資することを目的としています。
背景と経緯

平成28年度に焼却場にて生ごみをメタン発酵させ、そのガスで発電を行う、バイオマス発電を研究しました。その結果小規模の操業ではエネルギー回収の効率が良くないことがわかり、また、メタン発酵を行うことによって生じる残さと、ろ液の処理が課題として残りました。残渣は焼却処理で処理することを考えましたがろ液の問題が残りました。
一方、下水処理では古くから下水汚泥をメタン発酵させる方法があり、それによって生じる脱水ろ液は返流水で処理していることがわかりましたが、脱水した下水汚泥の処理についてはいろいろ課題があることもわかりました。
そこで焼却処理場で残渣の処理をし、下水処理場でろ液の処理をし、お互いの施設を連携させたら効率的な処理ができないかと考え、平成29年度より令和元年まで「MBTシステムの中小廃棄物処理施設におけるエネルギー回収に関する調査」という研究名で「ごみ処理施設と下水処理施設との連携」に関する研究を行ってまいりました。その研究では法制度の課題、人的資源の課題、地域的な課題、技術的な課題と様々な課題に取り組んで研究を行ってまいりました。
近年は、廃棄物処理におきましてもデジタルトランスフォーメーションや脱炭素が期待されていることから、本研究では関連施設におけるGISやAI・IoT・ICTなどのデジタル技術の活用に関する研究や、脱炭素のための取組に関する研究も行うこととし、令和2年度より「次世代静脈インフラの構築に向けた包括的研究」という名称に変更し、令和4年度以降も継続して活動しています。

実施年度:2020年度~2022年度

2022年度 事業内容

メンバーについて

共同研究事業「次世代静脈インフラの構築に向けた包括的な研究」では、廃棄物処理・3R研究の推進に関する技術的なテーマを設定し、有識者の委員3名および関心がある財団の会員企業5社と共同で調査研究を実施しています。また、オブザーバで環境省、国土交通省や関連団体の方々にも入って頂き、より活発な議論を展開できる場としています。

構成について

本共同研究事業は、課題ごとにワーキンググループ(以下WG)を形成して研究を行っています。WG1ではごみ処理施設と下水処理施設の連携促進に関する研究を、WG2では静脈施設の自動化等の考え方に関する研究を、WG3では廃棄物処理施設の脱炭素・省CO2に関する研究を行い、脱炭素などの各ワーキングで共通する事項や全体の取りまとめを検討会で行います。

各WGの目的について


2022年度の実績

WG1「ごみ処理施設と下水処理施設の連携に関する環境性・経済性の研究」

  1. 下水道施設で生ごみを受け入れたメタン発酵を行っている現地の調査(北海道恵庭市、北広島市)
  2. 下水道施設で生ごみを受け入れたメタン発酵を行っている施設の生ごみの分析と回分試験
  3. ごみ焼却施設と下水処理施設の連携事例の調査

WG2「静脈施設の自動化等の考え方に関する研究」

  1. ごみ焼却施設における自動化技術の事例調査
  2. 他分野における自動化尺度の事例調査
  3. 自動運転レベルの定義の検討

WG3「廃棄物処理施設の脱炭素・省CO2に関する研究」

  1. ごみ焼却施設の脱炭素化対策の環境性、経済性の評価と考察

本研究事業の成果発表と書籍掲載(2022年度)

成果発表

  1. 2022年10月14日に廃棄物・3R研究財団が開催した年次報告会にて「次世代静脈インフラの構築に向けた包括的研究」のタイトルで成果発表を行いました。
  2. 2023年1月25~27日に全国都市清掃会議が開催した研究・事例発表会にて「脱炭素化のためのメタン化処理を効果的にするごみ焼却施設と下水処理施設の連携」のタイトルで成果発表を行いました。

書籍掲載

  1. 日本工業出版の発行する環境浄化技術2023年1・2月号に「脱炭素化のメタン化処理を効果的にするごみ焼却施設と下水処理施設の連携」のタイトルで掲載しました。
  2. 全国都市清掃会議の発行する都市清掃2023年3月372号に「廃棄物処理施設と下水処理施設の連携による広域化,効率化について」のタイトルで掲載しました。

2021年度 事業内容

2021年度の共同研究事業は以下の体制としています。テーマごとのワーキンググループ(以下WG)方式を採用し、従前の検討会を各WGの上部組織として成果の方向性調整や相互情報交換の役割とし、一方の各WG研究会では各社のそれぞれのテーマの専門のメンバーや、オブザーバーとして環境省、国交省、国総研の方々にも入って頂き、より活発な議論を展開できる場としています(図)。
この体制での令和3年度の研究計画は下記(1)~(3)の通りです。


図 令和3年度共同研究事業の体制

(1)サブテーマ1「ごみ処理施設と下水処理施設の連携促進に関する研究会」
  1. 混合メタン発酵事例の現地調査及びヒアリング調査
  2. ごみ処理施設と下水処理施設の連携事例の現地調査及びヒアリング調査
  3. 混合一般廃棄物の生ごみ分離技術の調査(長岡技術科学大学で分析)
  4. 国総研(国交省 国土技術政策総合研究所)の調査研究との連携

4.については、今年度から下水道を核とした資源循環システムの広域化共同化に 関する研究を実施している国総研と同様な研究を行っていることから、調査研究の成果等に関して情報交換していきます。

(2)サブテーマ2「静脈施設の自動化等の考え方に関する研究会」
  1. 事例調査・アンケート調査のフォローアップ
    ・ 最新の公開情報に関するフォローアップを行います。
    ・2020年度は、コロナ禍により、アンケート調査後のヒアリング調査等が十分に実施できなかったため、フォローアップ調査を実施します。
  2. 自動化等に関する「尺度」に関する検討
    ・ 2020年度の調査により、自動化等の技術・システムを評価するための「尺度」を構築していくことの重要性が示唆されました。
    ・自治体等の理解を得るための「尺度」の在り方に関する検討に着手します。技術熟度レベルTechnology readiness levels (TRL)による評価を検討します。

(3)サブテーマ3「廃棄物処理施設の脱炭素・省CO2に関する研究会」
  1. パリ協定や地球温暖化対策計画の策定、中央環境審議会循環型社会部会(第38回)における、「廃棄物・資源循環分野における温室効果ガス排出実質ゼロに向けた中長期シナリオ(案)について」の公表(令和3年8月5日)等、廃棄物分野においても脱炭素の取組を加速しなければならない状況です。本WGでは、こうした国の動向や自治体の動向をフォローするとともに、技術・経済的な観点から必要となる対応策を抽出することを目的とします。

なお、サブテーマ3の検討においては、「令和3年度脱炭素化・先導的廃棄物処理システム実証事業」(環境省委託事業)に応募し、採択された「地域の熱利用マッチングによる焼却施設からのエネルギー回収高度化実証」事業の一部を受託したことから、整合性を取りながら進めて行きます。

2021年度の実績

  1. 第43回全国都市清掃研究事例発表会資料Ⅰ-1-3「次世代静脈インフラの構築に向けた包括的研究(ごみ焼却施設と下水処理施設の連携)」
  2. 年次報告会資料「次世代静脈インフラの構築に向けた包括的研究」

2020年度 事業内容

2020年度からは、2019年度までの共同研究事業の成果を自治体に普及させるため活動中です。まず広報活動として、環境誌「環境施設」に「ごみ焼却施設と下水処理施設の連携に向けて」「連携検討支援ツールの開発~GISによる可視化と環境性・経済性評価のケーススタディ~」の2編を投稿しました。また、当財団の2020年度年次報告会でユーチューブにより、表題のタイトルで5つの研究成果を報告し、200件以上の視聴アクセスを得ました。
このように開発したツール(GIS、環境性・経済性評価)の持続的な運用体制の構築及びその社会実装に向けた活動を行うと共に、自治体と連携した実証事業の企画立案を継続しています。また、同時に静脈施設の自動運転、AI・IoT等(自動化等)の普及促進を図る方策を見出す目的で、「静脈施設の自動化等の考え方に関する研究」をサブテーマとしました。静脈施設が自動化等技術を活用した重複のない効率的な「次世代静脈インフラ」に近づくための方策を研究しています。
2020年度はメインテーマと2つのサブテーマを設定しました。

(1)メインテーマ「次世代静脈インフラの構築に向けた包括的研究」 ~ごみ焼却施設と下水処理施設の連携可能性の検討~
(2)サブテーマ1「MBTシステムの エネルギー回収に関する調査」

開発したツール(GIS、環境性・経済性評価)の持続的な運用体制の構築及びその社会実装に向けた検討を行います。また、自治体と連携した実証事業の企画立案を行います。(事例:2019年度佐賀県唐津市)

(3)サブテーマ2「静脈施設の自動化等の考え方に関する研究」

本研究の目的は、自動運転、AI・IoT等(自動化等)の普及促進を図るために必要な方策等を研究することです。

2020年度の実績

  1. 第42回全国都市清掃研究事例発表会資料Ⅰ-1-3「次世代静脈インフラの構築に向けた包括的研究(ごみ焼却施設と下水処理施設の連携)」
  2. 年次報告会ppt資料「次世代静脈インフラの構築に向けた包括的研究」